さて、はて。
何から話そう。
まず一に、私は普通の女子高生。
普通とはいっても、高校は少し特殊だけれども。そういう私も特殊なのだろうか?
そんな事は置いておいて、本題はこれだ。
次の二、うちのクラスには、異世界人がいる。
私はそれを理解している。なぜだか。彼がいつ異世界人だと分かったのかも分からないのに。
だが、理解していた。
彼は自分の名はドルべだと言っていた。真面目で、少しドジで、やたら繊細な男である。
私はドルべと廊下を歩いているのだが、不意に口を突くようにドルべに質問した。
「ドルべって幾つなの?失礼かもしれないけどさ」
彼は嫌がる訳でもなく、首を横に振ってから真剣に答えた。
「分からない。何年生きているのか…」
さらに、私は追撃するように聞く。
「そっちの世界とこっちでは時の流れ方が違うのかい?」
「私の故郷では時間の変化を感じる物は無い」
時間の概念が無い?
そういえば何故私は彼の隣を歩いているんだ、と考えた結果、私が勝手に懐いているだけなのかもしれない。そして彼は優しいのだと思う。
優しい人のフリかもしれないな、とも思った。
移動教室から教室まで、ドルべと一緒だった。
異世界人、と言いつつも、もしかしたら私の幻覚かもしれない。
相手が嘘をついているとは微塵も考えていない。彼は異世界人だという事を、本当に理解している。知っているからだ。
存在はしているのか。
それが確かめたくて、教室の手前で、彼の腕に触れた。
「…?」
彼はどうしたのか、と聞いたが、私はそれに答えるのはやめた。
教室に入る。もうすぐHRの時間だから、生徒も席に着いたり、帰り支度をしている。
ドルべの席は私の前だが、彼は席には直行せず、クラスの配布物を配り始めた。
偉いものだが、彼にとってはやるべき事で、当然のようにやっている。だからあまり感心などはしていなかった。
私も私で、授業の道具をロッカーにしまう為、自分の席にはすぐに着かなかった。
荷物をしまって席に戻ると、ドルべが私の席に座っている。
「そこ私の席なんだけど…」
「…す、すまん…」
しっかりしているのだか、していないのだか、よく分からない人だな。
ドルべは早々に立って、席を明け渡した。けれどすれ違い様、紙を渡された。
よくよく見たら手紙のようだった。
学生がよくやる手紙折ではなくて、4つに畳んであるだけの、とてもシンプルな手紙。
その人らしさは出ている。
手紙には一言
"一緒に帰ろう"
帰り道一緒だったか…?
いや、そんな事はどうでもよく、即手紙の返事を書いた。猫の落書き付きで。
"いいよ!"
そして帰路を辿る。
いつもの風景が広がる。
いつもの?
これはいつもの風景ではないぞ、あまり見た事が無い場所だ。
つまり寄り道だ!
「なぁ、君は」
彼はいつもと変わらぬ真面目な顔で聞いた。
「この世界の人間と異世界人は友好な関係を築けると思うか…?」
これは私が答えていいのか?
国の大統領などに権限があるような質問だな…
「友好な関係は無理だろうね」
彼はやはり、という表情をしていた。
「国と国も仲良く出来ていないのに、ましてこの日本の中でさえも仲良くできない人とはできないんだから。仕方ないよ」
勿論皆が皆、そういう人ばかりじゃないのは自分でもわかってる。
「自分の事嫌いって言う人と仲良くしようとは思わないからね、普通」
「そうだな…。君は…私の事をどう思っている?」
普通、こういう場面は告白みたいな感じに、心ときめく…という感じになるのだが、ドルべはそういうのに気付かず発言しているようだ。
「友好的に思ってない相手に絵は描いて、それをあげたりしないよ」
「そうか…。あれかわいかった」
喜んでもらえていたようだった。
少しだけ嬉しそうにする彼は可愛かった。