それはある夜の事
ボクが館内を歩いていると、本棚の影に何かいた。
それはこの世の者とは思えない程珍妙な姿だった。黒のスーツ、黒いマント、羊とも蟹とも形容しがたい頭。
ボクは咄嗟にソレに一突き手刀を入れたね。ソレはボクに何か話しかけようとして出てきたのだろうけど、問答無用で気を失わせた。
だってびっくりしたんだもん。
…けれどこの…生き物…魔族だな。魂にプロテクト掛けてる。
関わらない方がいい。ポイした方がいい。
……もしかしたら次元が歪んだせいでこちらに来てしまった被害者かもしれない。
………。
*
数分後、ソファから起き上がって周りを見渡して、側に座るボクを見つけた。
「あ、起きた」
「私を殴ったのは貴様か…?」
低い男の声だ。さすが魔族。起きるの早い。
「びっくりしたんだよー、ごめんね?変質者っぽいから、その辺に捨てても良かったんだけどね、でも服装がなんか紳士っぽいかなってね、違ったらごめんまた気を失ってもらう」
「変質者などではない。私はただ、ここが何処なのか聞きたかっただけだ」
ボクははっきり言うと、男は機嫌を損ねたように答えた。
「おじさん、ボクは魔族に優しくなんてしないからね」
「…何?貴様…何故それを…」
「知っているよ。ベテランの魔族は魂に鍵を掛けられるって」
おじさんは動揺も何もしてなかったが、そのでかい頭をボクの顔ギリギリまで近づけてジッと見た。その時、その向こうの瞳と目があった。
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